本研究では, 近年とみに親密であるとされる母娘関係に焦点を当て, 大学生女性509名を対象に質問紙調査を行い, 親からの精神的自立という側面から捉えた発達のプロセスを適応の視点を加えて論じることのできる尺度を開発した。これにあたり親からの適応的な精神的自立とは「親との信頼関係を基盤として親から心理的に分離して親とは異なる自己を築くことである」とした。その結果, 「母親との信頼関係」と「母親からの心理的分離」の下位尺度から構成される「母子関係における精神的自立尺度」が作成され, その尺度について信頼性と妥当性が検証された。さらに, これらを2軸として娘が捉える母親との関係を「依存葛藤型」「母子関係疎型」「密着型」「自立型」に類型化する「母子関係の4類型モデル」を提唱し, 得られた類型について愛着類型と自我同一性地位との関連から検討した。その結果, 一定の対応が見出され, 「母親との信頼関係」は適応と関連した親子関係の個人差を示す指標であり, 「母親からの心理的分離」は発達的に変化する指標であることが示唆された。得られた結果より, 「密着型→自立型経路」「依存葛藤型→母子関係疎型経路」といった母娘関係の発達のプロセスを考察した。