学生による授業評価は, ここ十数年の間に急速に普及し, 現在ではほとんどの大学で実施されている。しかし, 学生の評価は信用できないといった否定的な見解もあり, 学生だけでなく教員の意見も考慮して, 多角的な視点で授業の評価を捉える必要がある。また, 授業評価場面で一般的に利用される評定尺度法は, 教員個人内の比較を行う際には有益であるが, 個人間の比較には適さない。これは, 授業ごとに評価者(学生)が異なり, 評価者(学生)の評価の厳しさの差の影響を統制することができないためである。本論文では, 豊田・米村・齋藤(2004)のGAS(Group AHP by SEM)を拡張し, 学生間で評価する授業が同一でない状況に適用でき, 学生の評価の厳しさの差の影響を取り除いた上で授業間の相対的な比較が可能な授業評価モデルを提案した。そして, 学生と教員間で重要視される評価基準の違いを考慮した授業の総合評価を算出した。授業評価調査を実施し, 提案モデルを適用した結果, 学生と教員間では重要視する評価基準が異なることが示された一方で, 評価基準の重要度を利用して算出される両者の総合評価間の相関は高い値となった。なお, 母数の推定には, MCMC法によるベイズ推定を利用した。