本研究では, 教職志望の変化に及ぼす教育実習の影響過程を, 社会・認知的キャリア理論を参考に検討し, さらに, 国立教育政策研究所生徒指導研究センターの提唱する「職業的(進路)発達にかかわる諸能力」の, その過程における働きを明らかにすることを目的とした。教育実習生を対象に実習前と後に質問紙調査を実施し, 240名分のデータを得た。分析の結果, 実習前の「職業的(進路)発達にかかわる諸能力」が高かった者ほど, 教職効力感が高く, 実習で個人的達成をより多く経験していたが, 実習前後での教職効力感の変化量は小さかった。また, 実習前の「職業的(進路)発達にかかわる諸能力」の高低によって, 諸要因間の関係性が異なることが確認された。「職業的(進路)発達にかかわる諸能力」低群では, 指導教員からの支援が教職効力感向上に大きく影響しており, それが教職への興味の変化を介して教職志望の変化に影響を及ぼしていた。一方高群では, 実習での個人的達成状況によって特に教授・指導にかかわる教職効力感の変化が生じ, それがやりがいといった教職結果期待の変化および教職への興味の変化を介して教職志望の変化に影響を及ぼしていた。