本研究は思考生成方略が記憶の意図的抑制に有効かどうかを検討したものである。思考生成方略とは, 抑制対象の手がかりが提示された際, 特定の思考内容を生成し, それについて考えることで抑制を行う方略であった。その思考内容は, 手がかりと意味的に関連するが, 抑制対象とは異なるものであった。課題にはThink/No-think課題(Anderson & Green, 2001)を用いた。統制群( n =15)と思考生成方略群( n =14)を設定し, 両群の間で抑制対象の(抑制意図に反した)侵入度と記憶成績を比較した。記憶成績は手がかり再生テストと再認テストによって測定した。実験の結果, 思考生成方略群でのみ, 正再生率, 正再認時間における記憶の抑制効果が確認された。さらに, 思考生成方略群の方が統制群よりも侵入度を低く報告した。以上のような結果から, 思考生成方略が記憶の意図的抑制効果を高めることが示された。