本研究の目的は, 「生得的にストレスを感じやすい」というリスクを, レジリエンスによって後天的に補うことができるかを検討することであった。18歳以上の男女433名を対象に質問紙調査を行い, 心理的敏感さと, 資質的レジリエンス要因(持って生まれた気質の影響を受けやすい要因)・獲得的レジリエンス要因(後天的に身につけやすい要因)の関係を検討した。分散分析の結果, 心理的敏感さの高い人々は資質的レジリエンス要因が低い傾向が示されたが, 獲得的レジリエンス要因については敏感さとは関係なく高めていける可能性が示唆された。次に, 心理的敏感さから心理的適応感への負の影響に対する各レジリエンス要因の緩衝効果を検討したところ, 資質的レジリエンス要因では緩衝効果が見られたものの, 獲得的レジリエンス要因では主効果のみが示され, 敏感さというリスクを後天的に補える可能性は示されなかった。また心理的敏感さの程度によって, 心理的適応感の向上に効果的なレジリエンスが異なることも示唆され, 個人の持つ気質に合わせたレジリエンスを引き出すことが重要であることが示唆された。