学業領域における自己価値の随伴性とは, 個人が学業達成をどの程度自尊心の源としているかの指標である。これまでの自己価値の随伴性を扱った研究では, 自己価値の随伴性が成績などの学習成果に与える影響を検討してきたが, 必ずしも一貫した結果が得られていない。このような矛盾した結果には調整変数が自己価値の随伴性と学習成果の間の関連を調整している可能性が考えられる。本研究では, 調整変数として学級の目標構造(熟達目標構造と遂行目標構造)に着目し, 自己価値の随伴性と目標構造が交互作用することにより, 内発的興味と自己調整学習方略に与える影響を階層線形モデル(HLM)により検討した。小学校5年生から中学校2年生, 1,212名(合計43学級)を対象に算数・数学の学習について質問紙による調査を行った。結果, 自己価値の随伴性と熟達目標構造は内発的興味および自己調整学習方略に正の関連を有していた。また, 自己調整学習方略において自己価値の随伴性と熟達目標構造の交互作用が有意となり, 自己価値の随伴性は熟達目標構造が低い学級において, 自己調整学習方略の使用を高めることが明らかとなった。