本研究では, まず研究1において思春期(中学生)・青年期(高校生, 大学生および専門学校生)における自己愛的甘えの程度および質についての発達的変化を検討した。さらに, 研究2においては自我同一性の形成に対する自己愛的甘えの影響を検討するため, 自己愛的甘え尺度と多次元自我同一性尺度との関連について青年期である高校生と大学生および専門学校生との間で比較検討した。その結果, 中学生・高校生・大学生および専門学校生の全ての段階で, 自己愛的甘えの3つの構成概念(「屈折的甘え」「配慮の要求」「許容への過度の期待」)は同様に仮定できることが明らかになった。また, 思春期(中学生)においては「甘え」の欲求はあるが, 自己愛的甘えについての自覚が低いのに対し, 青年期(高校生・大学生および専門学校生)になると自己愛的甘えに対する自覚が高くなることが示された。さらに, 高校生においては自己愛的甘えが自我同一性に部分的に関わっているが, 大学生以降になると高校生に比べ自己愛的甘えの問題がより広く自我同一性の問題に関わってくることが示唆された。