近年, 学校現場でソーシャルスキル教育(以下, SSE)が盛んに実践されている。SSEの効果を実証するためには, その効果を適切に測定するソーシャルスキル尺度(以下, スキル尺度)が不可欠である。そこで本研究では, SSEへの適用という視点から, スキル尺度の日本における現状と課題を明らかにすることを目的とした。展望Iでは, SSEの効果を測定するためにスキル尺度に求められる条件を明らかにすることを目的として, 近年, 日本でなされたSSE実践研究23本を, 効果測定のために測定されたソーシャルスキルの内容という観点から展望した。結果, SSEの効果を測定するためにスキル尺度に求められる条件は, SSEのターゲットスキルを正確に測定すること, 一般的なソーシャルスキルを網羅的に測定することの2つであることが明らかになった。展望IIでは, 既存のスキル尺度が上記した条件をどれだけ満たしているかを明らかにすることを目的として, 先行研究で用いられていたスキル尺度34個を展望した。結果, 既存のスキル尺度の内容には偏りがあり, ソーシャルスキルを網羅的に測定できないこと, 既存のスキル尺度ではSSEのターゲットスキルを正確に測定できないことが明らかになった。さいごに, 展望I, IIの結果を踏まえ, スキル尺度の今後の展望を示した。