本研究では, 過剰適応を「関係維持・対立回避的行動」と「本来感」から捉えた。本研究の目的は, 自他双方が満足できる葛藤解決を目指す「統合的葛藤解決スキル」をとる程度と, 関係維持・対立回避的行動, 本来感との関連を検討することであった。予備調査では, 大学生429名の回答を分析し, 「丁寧な自己表現」「粘り強さ」「受容・共感」「統合的志向」からなる統合的葛藤解決スキル尺度(Integrating Conflict Resolution Skills Scale ; ICRS-S)を開発した。α係数や再検査信頼性の値から, 一定の信頼性が確認された。また, 社会的スキル, 友人満足感, 対人葛藤方略スタイルとの相関分析から, 一定の妥当性が確認された。本調査では, 大学生197名の回答を分析し, 統合的葛藤解決スキルと関係維持・対立回避的行動, 本来感の関連を検討した。共分散構造分析の結果, 統合的葛藤解決スキルは本来感を向上させ, 過剰適応者の適応を促進する可能性が示唆された。