本研究では, 青年期において死について考えることが, 時間的態度にどのような影響を及ぼすのかについて実験的に検討した。実験参加者である大学生127名を, 死について考える群41名, 生きがいについて考える群43名, 死や生きがいとは無関係なものについて考える統制群43名に分け, それぞれ課題の前後に時間的態度を質問紙によって測定した。時期(課題前・課題後)×課題(死・生きがい・統制)の2要因分散分析を行った結果, 死について考える群においてのみ, 課題後に時間的態度が肯定的になることが示された。死について考えることには, 生きがいについて考えることによっては得られない, 時間的態度を肯定的にするという効果があることが示された。また, 課題に対する自由記述の分析からは, 死について考えることには, 人生の有限性を再認識させ, 時間の大切さについて考えさせるという特徴があることが明らかとなった。以上より, デス・エデュケーションの持つ心理的機能として, 人生の有限性を再認識させ, 現在を中心とした時間的態度を肯定的にするという一側面が明らかになったといえる。