日常生活で自己や他者がストレスを経験した際にネガティブな情動を調整する経験は, 情動を上手く扱うトレーニングのように働き, 情動知能の高さにつながる可能性がある。本研究では, ストレス経験として定期試験を取り上げ, 自他の情動調整行動が情動知能の変化と正に関連する可能性を検討した。さらに, この可能性を検討するために, 情動調整の多次元性を考慮に入れて自他の情動調整行動を測定する尺度を作成した。大学生101名(男性61名, 女性40名)が試験前と試験後の2時点で調査票に回答した。分析の結果, 定期試験期間中の, 肯定的再解釈, 気晴らし, 肯定的再解釈のサポート, 情動の表出のサポートが, 情動知能自己領域と情動知能他者領域の変化と正に関連することが示された。さらに, 気晴らしのサポートが, 情動知能他者領域の変化と正に関連することが示された。また, 状況的および特性的な情動調整行動と試験ストレスの影響を比較した結果, 特性的な情動調整行動や定期試験に対するストレス度よりも, 対試験ストレスの情動調整行動が情動知能の変化と正に関連していた。以上より, 定期試験期間の自他の情動調整行動が情動知能の変化と正に関連することが明らかにされた。