1) 本研究では英国の小学生第3学年男子50名, 女子50 名, 計100名を被験者にして, 算数問題の難易度を規定すると考えられる要因の中から5要因を選び, これらを含む問題を作成して与えた結果, 加法と乗法 (0), 項数の多少 (N), 文章問題と計算問題 (M), 単位の有無 (U) および数字の大小 (S) の5要因が, 上記の順に難易度を規定していることがわかつた。 2) 2条件の交互作用が認められたものは, 可能な10組のうち, ON, UN, MU, MN, およびMOの5組である。 3) 3条件の交互作用は, 可能な10組のうち, UON, ONS, およびMUNの3組である。 4) 4ないし5条件の交互作用があるということは確かめられなかつた。 5) 交互作用は, 特にO, M, Uを含む組み合わせに認められるが, このなかでO, M, およびNがO2, M2, N3の条件をとることによつて, 算数問題がより難しくなる傾向がある。しかしUのみは, すでにO2, M2, N2またはS2を含み困難な問題に, U3として加わるとすなわち単位の導入を行なうと, 逆に問題をやさしくする傾向が認められた。 6) 5要因 (main factors) は困難度に75%の寄与をし, 2ないし3要因の相互作用は全体で17%の寄与をし, 計 92%が実験にとりあげた5条件とその交互作用によつて説明される。残りの8%が実験誤差も含めた残差となる。この実験のわく内で, 交互作用が比較的に少ないという理由から, 上記5要因を, 算数問題の難易度を規定する主要な要因であると考えることができる。 7) 本研究の被験者が英国の小学生であることから, 同種の方法を日本の児童に適用した研究が必要と考えられる。その際, 問題作成の手続きは同一でよいが, 内容特に単位の採用について配慮が必要である。 8) 本研究では, 1個の算数問題がその文脈上の複数の要因によつて, 同時にその難易度を決定されている関係の一部を明らかにした。 〔注〕 この研究は筆者が, Manchester大学において1961年 3月に提出した論文“On the measurement of difficulty levels of arithmetic sums for junior 3 children”に基づくものである。