“形・色問題”の研究について,年令的発達の原理によるものと気質性格的原理によるものとを, より包括的な立場から調和させるための試みとして, Lotto-Methodeによつて形・色の反応恒常性を明らかにすることを目的として, つぎのような実験がなされた。 本実験における被験者は, 前実験と全く同様な実験方法によつて, およそ1年後における形・色に対する反応恒常性について考察された。 その結果は, 従来から行なゆれている伝統的な教示法を用いた統制的教示法においては, 得られた数値としては前実験と同様に, すでに4才以後のすべての年令において色反応よりも形反応が優勢である。これを統計的に確かめてみると, 4才と7才以後の各年令との間と5才と7才以後の各年令間にそれぞれ有意な差がみられ, 7才を境にして著しい反応変化ないし移行のあることが確かめられた。この傾向は, 前実験において3才と4才の間に色反応から形反応への反応転換がみられ4才以後は一貫して色反応よりも形反応が優勢であり, 7~8才を境にして反応変化が顕著になることと一致していた。このような一致した反応傾向について, 前実験とそれよりおよそ1年後の本実験との反応恒常性の有無をみたところ, 6~7才以後から60%程度の恒常率を示すようになり, 11才において90%近くの恒常率を示すに至つた。前実験1の形反応の率は, 12才で100%を示すから形反応の恒常率も当然100%になることが予想された。しかし,このような反応恒常性については, 気質性格的な個体の固有活動としての恒常的な反応固執性の条件よりも, 年令的発達に伴なう形抽象への恒常的な反応の条件により多く依存するものであることが推察された。 一方, 実験的教示による恒常性については, 発達的な一般傾向としては前実験と同様な結果を示し, それは統制的教示の結果と大差はなかつた。しかし, 実験的教示においては, できるだけ自然の状態によつて反応するよう教示されたため, 個体の固有活動に, より多く依存すると考えられる反応傾向がみられ, 統制的教示の場合よりも前実験と本実験の間に反応の動揺が大きく, その間に反応恒常性の程度が低かつた。このことによつて, “形・色問題”の研究にLotto-Methodeを用い, 伝統的教示を行なう場合, そこには気質性格的条件よりも年令発達的条件がより大きな要因となることが示唆された。 したがつて, “形・色問題”について,のこれを抽象能力の発達傾向の面から考察する場合には, Lotto-Methodeによつて従来の伝統的教示法を用いる方が, 方法的に妥当性をもつように推察された。しかし, 実験的教示法によつた場合には, そこには個体の固有活動により多く依存する要因もみられたので, 実験的教示法と反応恒常性の関係を究明し, 気質性格面からの追求をすることが今後に残されたひとつの課題であると考えられる。