報告Iの手続きを経て選出された成人性測定の有効項目, 男28, 女19を青年期の終期の時期と様相を明らかにするため20才代を中心とする被験者1104名に質問紙で実施してみた結果, 男は25~26才, 女は21~22才をいちおう青年期の終期とみるのが適当であるという結論を得た。しかしこの時期の心理的様相は男女によつてかなり異なり, 男子では知的成熟は早く進むが情緒面には一部未成熟性を残し, 社会面では対人関係の技能のうえで不十分な状態であり, 女子では全体として男子より未成熟性が著しく, 特に情緒面, 社会面は部分的成熟が認められるだけでまだ不安定だが, 知的面でやや落ちつきが現われるという状態であることが推察された。しかも男女とも個人差が大きく, それはひとつは質問に対する内省の難しさによるが, もうひとつは生活環境的条件, 殊に結婚経験に関係していることが示唆された。 しかし報告I, IIを含めて, この研究にはいくつかの反省すべき点が残る。 その1は成人性をはじめからいくつかの項目に分けて扱つてきたが, これらを総合した成人としての人格全体の特徴を明らかにはしなかつたこと。したがつて成人性の発達もこれらの項目の計としてのみみられ, 人格全体の問題として心理的に論じえなかつたこと。 その2は結局, 成人としての認定基準を年令という社会的なものによらざるをえなかつたこと。30才代の人を成人であるという根拠は社会的にはあつても心理学的にはなにもないのである。 その3は20才代の推移を各才ごとにみるには各才少なくも男女各200名くらいの被験者が望ましく, その点, 被験者の数が部分的に少なかつたこと。そのため最終的には2才段階別にしかみられなかつたこと。 その4は有効項目が案外すこししか残らなかつたので, これを4領域別にみるのはむりが生じたこと。女子の場合, 殊にそうである。 最後に質問紙で被験者の内省を手がかりとしてこうした成熟を探求する可否が問題になるが, これは同型の性格テスト一般についてもいわれうる問題である。本研究ではただ各項目の表現上の意味およびその心理的特性の意義がもつと明確にされるべきことが挙げられるだろう。 なお成人性といつても青年期の終期の測定が主目的だつたから, 老化あるいは老衰を意味するような成人性現象は取り扱わなかつた。したがつてここで意味する成人性は老人も含めた成人のすべての特性についてふれているものではない。