あらわな行動 (overt bahavior) をもとにして分類した精薄児のタイプと, 算数能力との関係を考察した。 被験者は18人, 1Ω が51~80, MAが6: 2~9: 1, CA10: 9~13: 9の範囲の児童である。 (1) 全般にAタイプ (基本的なタイプ) では, 他のタイプに比べて, 学習の達成率がよかつた。次にBタイプ (興奮的なタイプ), Cタイプ (制止的なタイプ) の順であつた。 (2) 数の基本的な内容においては, 3つのタイプの差は小さいが, 外的な事物との接触によつて学習されることの多い内容では, 特にBとCタイプに著しい差が認められた。 (3) Aタイプが, 他のタイプにくらべて発達的に学習能力で伸びが見られた。 (4) Bタイプが, 機械的な1頂方向的思考を要する内容のものと, 逆方向的河逆的な思考を要するものの間の達成率の差が大きかった。 (5) Cタイプは, その差が少なく, 他の内容間の差も小さかった。また, Cタイプは, 学習する速度が遅く, 吸収される内容も少ないが, いったん学習して吸収されると定着する傾向はBより大きいようである。 (6) タイプと関係なく, MAについて考察を行なった。MA6才と7才の間で臨界点になるようである。MA8・9才~7才はいちおう70%の達成率を示し, 3年生程度の内容を教材として取りあげうると考えた。MA6才以下では, 基本的な内容を取りあげねばならないと思われた。 (注) 本研究は39年度文部省科学研究費総合研究 “精神薄弱児の心理, 身体発達及びその教育効果についての研究” (代表者三谷甚次郎) の一部であり, 京都学芸大学の岡本夏木, 田村昌彦, 来栖淳郎各氏のご協力によるものでここに感謝の意を表する。