昭和39年11月5日から11月25日までの間に, 仙台市内5つの幼稚園の園児423名の家庭 (主に両親) と, 26の幼稚園の教師66名を対象として, 数教育の実態および数教育観に関して質問紙調査を行なつた。 その結果は, およそ次のとおりである。 (1) 園児の家庭のうち, 約90%が数教育を行なつていると答えている。数教育の開始年令は一般に早くて2才, 遅くも5才頃からであり, ほとんど母親か父親が教えている。その場合, 適当な機会を見出したり, 子どもの必要, 興味や質問などに応じてむりのない教え方をしており, 定期的・系統的にとりあげる者はごく一部に限られる。したがつて, 約1/3の者が教える際の困難点を指摘しているにすぎない。 (2) 各家庭で教えている数の領域・内容をみると, 小学校初学年で体系的・抽象的な算数学習を始めるに当たつて大切であると考えられる, いわゆる算数の数学的側面が主であり, それとくらべて, 数の社会的適用に際して一般的な経験を与えるものと考えられる数の社会的側面はあまり扱われていないといえよう。 (3) 幼稚園において数の教育を実施する必要があるかどうかについては, 約70%の者が必要性を認める。その理由には, 園児の生活や遊びにおける必要性, 数に対する要求, 興味や理解力の発生を挙げる者が多い。一部に, 入学の予備知識としての必要性をとなえる者もある。しかし, あくまで子どもの生活や遊びを通じてむりのない程度で扱うべきであるとする意見が大勢を占める。 (4) 幼稚園の教師の約80%が数の教育を行なつたことがあると答えているが, 教え方ではやはり家庭の場合と同様な傾向がみられ, 系統的に教える者はごく少数である。 (5) 幼稚園における数教育の必要性に関しては, 教師の約85%がその必要を認める。その理由に挙げられている内容はほとんど家庭の場合と同様である。その場合, 園児のふだんの生活や遊びに必要な数を, 子どもの生活や遊びと切り離さないでとりあげていくべきであるとする意見が大部分である。