本研究の目的は (1) 同性のモデルが異性玩具で遊んでいるのを被験児が観察した結果としで, 被験児の異性玩具1に対する反応に膜制止の効果がみられるか否か,(2) 異性モデルが適切玩具 (被験児にとっては非適切玩具) で遊んでいるのを被験児が観察した場合にも, 脱制止の効果が見られるか否か, の2卓を検討すうことであった。 幼稚園男児45名, 女児45名 (年令範囲5才10か月から6才8か月) が, 同性モデル, 異性モデル, 統制の3群に配置された。同性, 異性モデル群は, モズルの行動を短時間観察した後に, 統制群は観察なしで, 異準玩具と中性玩具の置かれている部屋で10命間の自由遊びの時間が与えられた6幼児の行動は15秒ごとに観察室から観察され記録された。測定値として, 幼児が異性玩具に反応するまでの時間 (潜時) と, 観察中に異性玩具で遊んだ割合 (異性-%) が算出きれた。 主な結果は, (1) 男児同性モデル群の〈潜時〉は異性モデル, 統制両群の測定値より有意に短く, 〈異性-%〉は異性モデル, 統制両群のものより有意に大であった。この結果は, 異性役割行動に対するモデルの脱制止効果を示すものである。女児のデータでは, 脱制止効果の傾向が認められただけで, 3条件間に有意差は見られなかった。 (2) 適切な性役割行動をおとなっているモデルを観察した被験児には, 税制止効果も禁止の効果もともにみられなかった。 幼児の異性役割行動に対するモデルの脱制止効果は, へやモデルの偏倚的行動と, この行動に対して実験者が無反応であったこと (罰を与えなかったこと), その2つを, 観察した結果として解釈された。