精薄児における学習・思考能力と知能程度 (MA, IQ) 段階との関連の検討を意図して, 対連合的学習とその転移検査が行なわれた。 精薄児71名, 正常幼児50名の被験者を各MA (IQ) 段階に分けた。学習条件として, 意味的条件と無意味的条件を設定し, おのおの色および形に基づいた反応 (名称) を形成させた。学習完了後, 転移検査, 言語化検査が行なわれた。 その結果, 学習過程, 成績, 転移度, 言語化の程度においてMA (IQ) 段階に応じた変化を示すこと, しかしその変化は質的変化であり, 臨界的な段階があることが示唆された。すなわち, 言語的・概念的水準での反応は精薄児MA8才, MA6 (H) 才群にみられ, それ以下の段階では困難であつた。意味的条件の利用はMA5才程度でもみられるが, それは直観的・表象的な水準であり, 概念化されたものではなかつた。同一MA水準の精薄児は正常児よりさらに1年-3年程度の差があるが, IQ程度によつても異なり, 課題によつてはIQ約60程度あれば同一MAの正常児よりまさつていること, あるいはそのMA段階より高いがIQの低いものよりまさつていることが示唆された。