本研究の目的は, 異性玩具を避けて中性玩具で遊んでいる同性の成人モデルを幼児が観察した結果, 幼児の異性玩具に対する反応に制止め効果が見られるかどうかを検討することである。80人の幼稚園児 (男女各々40人) が被験児として実験に参加した。幼児は男女別に, 2 (年少・年長) ×2 (実験・統制群) デザインの4下位群のいずれかに配置された。年少群の年令範囲は5才~5才4か月, 年長群は6才~6才4か月である。実験群の幼児はモデルの行動を2分間観察した後に, 統制群は観察なしで, 異性玩具と中性玩具の置かれている部屋で7分間, の自由遊びの時間が与えられた。被験児の行動は, 一面視鏡をとおして10秒ごとに観察され記録された。本研究では2種の測度, 潜時と異性-%が求められた。潜時は, 何回目の観察のときに幼児が異性玩具に視線を向け接近し, 接触したかによつて決められた。異性-%は, 幼児が異性玩具に視線を向けた度数, 接近した度数, 接触した度数を, 全玩具に対する視線, 接近, 接触の度数で除し, 100倍して算出された。 主な結果は次のとおりである。 1.潜時, 異性-%の両測度ともに, 実験群は統制群よりも異性玩具を回避する傾向が強かったことを示した。実験群の異性玩具に対する反応の抑制は, 異性玩具に対するモデルの回避行動を観察した結果であり, モデルが中性玩具で遊んでいるのを観察した結果, 観察児の興味が中性玩具に向けられ, これが異性役割り反応と拮抗したためだと解釈された。} 2.年少・年長群に対するモデルの影響差は, 男児の潜時の結果たのみ見られた。年少群では, 実験群の潜時は統制群のものかり有意に長か? たが, 年長癖においては実験・統制群間に有意な差はみられなかつた。