本研究では, 特殊児のパーソナリティー研究の基礎的な一方法として, 実験診断学的方法を用いることによつて基本的な人格徴表をとらえようとした。具体的には, 個人の心的エネルギー表出の型 (Pattern) の相違が個人の人格的要因の差異に帰着できるという考えに基づいている。実験は, 盲, ろうおよび正常者の群についての打叩による精神テンポの諸測度の検討である。従来本領域における研究は, 主として速度を測度とした考察であったが, ここではそのほかに打叩が示す多くの客観的側面をとらえ, これがもつ機能的構造を基本的指標とした行動の型を記述した。3群のそれぞれが示す型の間には明確な差が存在し, 特にろう群は他群に比して特異な型を示すことが認められた。この差異は特殊児の人格診断にある重要な手がかりとしての意味をもつものと考えられる。今後それを裏づけるために, 精神テンポの諸領域の関連度ならびに打叩による精神テンポの内部要因のそれぞれがもつ心理学的意味の解明が必要であると思われる。