パースナリティーの発達, ないし社会的適応のひとつの重要な側面である性役割学習過程が, 男・女の性に対してそれぞれどのような役割特性を認知しているかの面から問題とされた。ことにとれが自我に目覚めて外的権威に反発する時期を経て社会的人間へと転じてゆく青年期にどのような変化をたどるか, また自身の性によって認知のしかたにどんな相違があるかが検討された。 性役割特性を示す形容詞群から成る質問紙を用い, 男・女両性についてそれぞれの特性がどの程度望ましいかの比較・評定を求めた。そこから男.女両役割得点および両得点差が求められ, 男女をどのような差で役割分化させているかが検討された。 その結果, 次の諸点が指摘された。 (1) 全34項目中10項目については, 全被験者群によって同様な結果が得られ, 被験者の性・年令の差を問わず認知のしかたにある共通する面の存在することが示された。 (2) 一方, 他のいずれの群とも共通性をもたず特定の1群だけが性役割の分化にあたって有効とする特徴的な点もいくつかみられた。 (3) 一般に, 男性に対しては役割特性が明瞭であり, 多くの特性が付与されている。これに比べて女性役割特性はより少なく, ことに年少段階では明瞭に認知されがたい傾向がある。 (4) 被験者の性によって, 中学生から大学生にいたる問の年令による変動のしかたには相違がみられた。すなわち, (a) 男子では, 男・女両役割の分化の程度に著しい年令差があり, 年少段階ではわずかな特性でしか性役割は区別されておらず未分化である。年長になるにつれて男・女役両割はこまかく明瞭な差をもって分化してゆく。 (b) 女子では, 男・女両役割を識別するのに有効な項目特性数に関しては年令差はみられない。しかし内容的にみると, 何が基準となって識別されているか, 女性役割特 性が明瞭に積極的に捉えられているか, などの点で, 年長段階と年少段階との問には相違がある。 (5) 低年令段階では男子と女子との間に認知のしかたに差があるが, 年長段階になると性差は小さくなり, 男・女群間の相違は小さくなる傾向がみとめられた。 (6) 男・女両役割得点差と評定の絶対値との関係から各群の特徴が吟味され, 今後とるべきいくつかの分析方向が示唆された。