本研究の目的は, 幼児の単純な運動反応に及ぼす, 代理的強化とモデルの反応速度の観察の相対的効果を吟味することであった。このために, 60人の幼児 (男児36 人, 女児24人) が, 作業速度で異なる3種のモデル群に配置された。各群の半数の被験児は, 社会的強化を受けながら作業をするモデルを, 残り半数の被験児は無強化事態で作業をするモデルを観察した。モデルを観察した直後に, 被験児はモデルと同一の作業を社会的強化を受けずに行なった。 実験の結果は, モデルの作業速度が観察児の作業量に影響を及ぼすことを明らかに示している。即ち速い速度で作業をするモデルを観察した幼児は, 作業速度のおそいモデルを観察した幼児よりも, より多くのビー玉を落した。これに対して, 被験児の作業量に及ぼす代理的強化の効果は, どの示範条件においても認められなかった。