本実験の目的は, 幼児における逆転移行学習の速ざが抽象能力と正の関係を示すという仮説を検証することである。この仮説は, Kendler and Kendler (1962) の言語的媒介反応説から演繹されたもめである。 160名の幼児がそれぞれ2つの対象からなる20項目の抽象検査を与えられた。被験者は, たとえばすずめとはとに共通な特徴はなんですかというように, 2つの対象に共通する抽象語を推測するようにいわれた。この検査にもとついて, 40名が得点の低い方から, 40名が得点の高い方から選択され, そしてその者に対して弁別と逆転を与えた。2次元 (大きさと明暗) の弁別問題が用いられた。それは大きい黒と小さい白の正方形の対と大きい白と小さい黒の正方形の対からなっている。被験者はまず大, 小, 白, 黒のいずれか1つを正刺激として学習した。それが完成すると教示を加えたり中断することなしに, 逆転が与えられた。弁別と逆転の学習基準は10 回中9回正答であった。 主な結果は次のとおりであった。(a) 高い抽象能力をもつ者と低い抽象能力をもつ者の間に, 弁別の成績に有意な差がなかった。(b) 明暗次元が適切なとき高い抽象能力をもつ者は低い抽象能力をもつ者よりも逆転移行問題を速く学習した。しかし, 大きさ次元が適切なときは両者の間に有意差がなかった。以上の結果を, Kendlerたちの言語媒介モデルに関連して考察した。