正常児と精神薄弱児におこなった3選択弁別学習における5つの言語強化の組合わせの量的結果を, さらに質的に理解するために, 誤り要因分析を行なった。なお, ここで分析の対象となる学習は, 3元 (色, 形, 位置) 3値の弁別学習で, 正値は3色のうちのある1色である。 その結果次のようなことがあきなかになった。 1. 誤り要因1 (被験者があらかじめ有する刺激の偏好偏嫌にもとつく) を示す人数は, 各群間に有意差はみられず, また出現率の抑制はすみやで, 学習成績全体に及ぼす影響はほとんどないと思われる。 2. 誤り要因II1, II3 (色または位置の交替反応) はすべての群において誤り要因II/1, II, 3 (色または位置の連続反応) よりも強く, その関係はRW群で最もはやく抑制された。また誤り要因II1, II3の出現率はすべての群において比較的スムーズに試行とともに低下したが, 誤り要因II, 1, II, 3ではNW系の出現率の減少はスム-ズでなく, また出現率もNrWが有意にRWや RN系より高かった。これらのことは, Wの持つ情報量はRのそれより少いうえに, 被験者の情報処理能力を越えてほとんど利用されないためと考えられた。したがつて, 消去の結果にみられるような, 精神薄弱児においてR N系のNが負の強化値を獲得しがたい, ということは, ここではあまり学習成績に関係しないことが理解された。 3. 誤り要因III3 (直前の試行で正であった位置を選び, 負であった位置をさける) をIII, 3と比較すると, 概して前者が強いが, 消去の結果から直前の試行の正誤が最もよぐ知らされると考えられる群, すなわち精神薄弱児におけるRW, NrW, NW, 正常児におけるRW, RNw, NrWにおいて試行の初めからIII3が強くあらわれ, 抑制が遅かった。とくにNrWではIII3の出現率が高く, その低下は停滞した。すなわち, Nの強化値の教示や獲得のしやすさがマイナスに働くことが示された。 4. 形に関する誤り要因II2, II, 2, III2およびIII, 2 は, 他の誤り要因が抑制されかけたころにあらわれる傾向があり, 副次的であった。 5. ステレオタイプな反応は精神薄弱児において正常児より有意に多くみられ, 前者の学習曲線が中期に停滞する大きな原因と考えられた。