青年期における「社会化 (socialization) 」の過程は, 社会が青年に要請する問題をとおして具体化されると考えられる。なかでも重要な問題は, 経済的自立と政治的自立の問題である。前者は進学・就職, 結婚等の具体的問題に, 後者は国民主権による必然的要請としての参政権の行使という問題に青年が接近する過程で獲得する。 これまでの青年心理学における研究の多くは, 前者に比重がおかれ, 後者 (政治的社会化) についての研究はきわめて少なく, わずかにHyman, H.(1959), Greenstein, F. 1.(1965), Hess, R. D. and Torney, J. V.(1968) の研究などがみられるにすぎない*。また本邦における青年心理学に関する文献目録の中からは発見することができない状況である (津留宏 (1969) 作成の文献目録) **。 社会心理学の領域で進められている政治的態度に関する多くの研究についてみても, その形成過程の研究は, 重要性が指摘されながらも, いまだに明らかにされていないことが指摘されている (三宅一郎ほか (1967))。 本研究は, 青年が即自的問題としての経済的自立を獲得する過程でいかなる政治的指向を求めているかを発達的に検討することを目的とする。