われわれは, 新しい性格診断法を研究していくなかで, 方法論上の問題に気づいた。それは, 質問型式で与えられる検査項目の反応が, 相互に独立したものではなく, 相関連して, 全体として被検者の内部状態を反映しているのであること, したがって, 各項目の被検者の内部状態によつて異なり, 必ずしても検査作成者の期待したものと一致しないことである。 このことが, さらに多くの資料によって確かめられるならば, 性格診断法の方法論は重大な課題に直面することになる。 ここでは, 現在わが国で最もよく標準化された検査のひとつとしてのYG性格検査を選び, その検査を構成している12個の尺度の全項目について, 項目相互の相関関係から検討を加えた。得られた結果は次のとおりであった。 (1)全項目の相関係数のうち, 相対的に高い相関係数は, 同一尺度に含まれる項目相互の間よりも, むしろ異なる尺度に含まれる項目相互の間に多かった。 (2) 全項目の相関行列をセントロイド法により因子分析した結果, 3個の因子によって75.2%が説明され, けっして12個の尺度に対応した因子負荷状況を示していなかった。 (3) 各尺度ごとの主軸法による因子分析の結果, 第1 因子によってカバーされる程度が70%以上の尺度は2個であったが, その1つは第2因子にも高い寄与率が認められた。 (4) 各尺度ごとの内的整合性を検討した結果, すべての項目が. 50以上の尺度得点との相関を示す尺度は1つもなかった。 以上の結果は, 方法論的課題の存在を明らかに示唆するものである。 われわれは, しかし, なお, 測定尺度構成の方向で研究を進め, さらに課題の性質を明確にしたうえで結論をくだしたいと考えている。