今日の攻撃性の研究は, 主にモデルの効果について検討がなされている。このアプローチは, Bandura, A. and Huston, A.(1961) を契機に始められたものである。筆者は攻撃的モデルをみることは観察者の攻撃行動を増加するだろうというBandura, A., Ross, D. and RossS. A.(1961) の仮説に基づいて, 攻撃的行動の獲得のきっかけを模倣に求め, 追試した。 その結果, 攻撃的モデルをみたグループは攻撃的でないモデルをみたグループ, モデルをみない統制群に比べて, 攻撃的行動を多く示した。モデルの性差による違いは, 特に身体的攻撃の模倣では, 男児女児とも男性モデルを模倣すると仮定したが, 男児は男性モデル, 女児は女性モデルを模倣する結果となり, モデルの行動のいかんにかかわらず, 同性モデルを模倣する傾向を示した。男児は女児に比べて, 身体的攻撃の模倣のみでなく, 模倣によらない身体的攻撃を多く表わし, 男児の方が攻撃的であることを示した。これらの結果は, 攻撃的行動におよぼすモデルの性差を除いて, Bandura et al.(1961) を支持するのもである。 さらに, 質問紙による養育態度と攻撃行動の関係をとらえた結果, 男児では体罰を多く用いる親に, 女児では女の子らしく振舞うことを強制しない親とで有意な相関を見出した。 以上のことより, 実験場面では攻撃的モデルの存在が被験児の後の行動に影響を与えているといえよう。また, モデルを見, 攻撃的行動を示した被験児の親が, 日常の養育にて攻撃的行動のモデルになっていたり, 攻撃的行動に対し寛大であったりすることも影響しているといえよう。モデルを見ることにより, 攻撃的行動が出現しやすいという結果をえたことにより, 被験児がモデルのどの点に一番興味づけられ, 行動を起こしているのかという点についても検討する必要があろう。