当面の認知的課題に調和したある刺激の導入は, その課題解決の過程において種々の程度で同化され, それを促進するが, 拮抗する刺激の導入は, その課題解決を妨害する。このような認知的拮抗反応事態において, 単一の行動を選択し, その行動の進行を維持する個人の能方は, 重要なパーソナリティの1特徴と考えられる。 本研究はSCWテストを発達的見地ないし, 適応異常的側面への適用を再検討するため, 中学生群, 大学生群および精神分裂病者群に実施し, 次の4つの認知的干渉 (CI) 度に関する機能的問題を把握することを目的とした。 1) CI度と知能, 学力および学業成就度の関係を明らかにする。 2) CI度とY-G性格検査によって測定されたパーソナリティ特性との関連を検討する。 3) 正常者群と精神分裂病者群のCI度の比較検討とその機能差に関する考察。 4) 干渉カードの刺激の複雑性が正常者群と精神分裂病者群のCI度におよぼす効果の検討。SCWテスト (個人検査法) によって測定されたCI 度の低いLISsは, CI度が比較的高いHISsにくらべ, 知的能力および学習能力にすぐれており, Over-Achieverが多かった。また前者が協調的, 支配的, しかも外向的なパーソナリティ特性を有しているのに対し, 後者は, 逆に非協調的, 服従的および内向的なパーソナリティ特性が強かった。なお, 精神分裂病者群のCI度は, 正常者群のそれよりも高く, 干渉カードの刺激の複雑性が増せば増すほど, 両群のCI度は高まり, 同時に両群のその差は著しくなった。 これらの結果から, 一般にLISsはHISsにくらべ学校生活をはじめ日常生活にうまく適応していくために望. ましいパーソナリティ特性を持っており, 自己の有している能力を効率よく発揮している, 比較的成熟した正常な被験者が多いといえよう。 同時に本実験の結果は従来のCI度に関する2, 3の研究結果とそれぞれ比較検討されたが, きわめて一致した実験結果が認められ, SCWテストによるパーソナリティ特性の実験診断的有効性が, 理論的にも実験的にも確認された。