本研究は, 比較的等質な学級集団に対して, 賞あるいは罰を与える比 (学級集団での賞あるいは罰を与えられる人数の割合) の違いによる賞あるいは罰の効果の違い, および賞あるいは罰を観察している者 (暗黙の強化をうけている者) の学習への効果をみることが主な目的である。附随的に強化の型 (連続強化と部分強化) の違いと学習の関係をみた。被験者は小学4年生10学級の児童で学習課題は計算問題である。 計算問題の第1日目の正答数および正答率を100とし, 5日間の変化を調べたところ次のようなことが見出された。 1賞の方が罰より正答数を増加させる。 2賞も罰も学級の多数に与えられるほど効果があり, 全員に与えられる時もっとも有効である。 3賞賛される者を観察する者の正答数の増加率は低く, それを観察する者が少ないほど著しい。 4叱責される者を観察する者の正答数の増加率は高く, それを観察する者が少ないほど著しい。 5正答率の増加しているのは少数の無視群と少数の叱責群のみである。 以上のような諸結果は, 賞罰や暗黙の強化に学習を促進する機能だけでなく, 抑制的機能をも仮定することにより説明された。 6連続強化群と部分強化群の間には学習に有意な差はみられなかった。