概念識別におよぼす言語命名の効果を規定している要因を明らかにすることを目的として, 2つの実験が企てられた。 実験Iでは, 命名語の熟知性を検討するために命名語として熟知語と非熟知語が用いられ, 刺激図形として無意味図形が用いられた。その結果, 熟知性の程度による言語命名の効果の違いは認められなかった。しかし, 課題遂行後の内省報告においては熟知語の方が非熟知語よりも分類理由としてより多く報告された。 実験IIでは, 命名される刺激次元 (適切・不適切) の種類, および命名語の刺激図形に対する適合性の2つの要因について同時に検討した。刺激は無意味図形であるが, 色, 形の次元によって変化する図形でもあった。その結果, 適切次元への言語命名は不適切次元への言語命名に比べて概念識別学習を促進することが実証された。また, 命名語と刺激の適合性については有意な差がみいだされなかった。 一般に概念的行動においては事物や事象に名辞を与える段階 (符号化), それを利用して範疇化を行なう段階 (符号の利用), 範疇化を言語的に表現する段階 (その符号の言語化) の3段階が認められ, 本研究で実証された言語命名の効果を論じる場合にも, これらの段階と関連づけて考察された。すなわち, 命名語の刺激に対する適合性は符号化に, 命名刺激次元の種類は符号化の利用に, 命名語の熟知性は符号の言語化にそれぞれ関与することが述べられた。