本実験は幼児の弁別学習におよぼす次元偏好性と言語化の相対的効果を評価するために計画された。 カード分類課題を用いて被験者の次元偏好性を調べたところ, ほとんどの者が形偏好者であったので, この者に対して, 色と形の二次元二価の弁別問題き訓練した。そのさい, 弁別課題における適切次元, 被験者の偏好次元, および言語反応をさせる次元に関して, TABLE 1 のような組合せが作られた。4つの実験群の者には弁別刺激に“赤”, “円”などの言語反応をさせたが, 2つの統制群の者には言語反応をさせなかった。 結果はTABLE 2に示したとおりで,(a) 次元偏好性と言語化の加算的効果はない,(b) 次元偏好性は弁別学習の成績に影響しない, および (c) 弁別学習は適切次元に対する言語化によって促進されるが, 不適切次元への言語化は弁別学習に影響しないことを示した。 次元偏好性が弁別学習に影響しなかったという結果は, 従来の多くの研究に反するものであるが, それはカード分類課題と弁別課題に対する被験者の異なる構えによって説明されるかもしれない。言語化の促進効果は本実」験とやや異なる手続きによるMilgram and Noce (1968) の実験と一致する。弁別刺激を言語化するようにという教示が, 適切次元に対する注意ないし観察反応の確率を増すこと, およびこの年齢の幼児には, 言語反応と運動反応の分離があることが示唆された。