青年期における性役割の認知構造とその発達過程を明らかにすることを目的として, 質問紙法によって得られた資料について因子分析的手法による処理, 分析を行なった。その結果, 次の諸点が明らかにされた。 1. 性役割識別の次元として男性役割に関する次元の第I因子 (知性), 第III因子 (行動力), 女性役割に関する次元の第II因子 (美・従順) が抽出された。 2. 次元ごとの因子得点につきグループ間の差の検討を行なった結果, 行動力の次元がもっとも高く, 逆に美・従順の次元はもっとも低いことが見出された。 3. 因子得点の平均および分布型から, 各次元の性役割識別性についての発達的変化が検討された。その結果, 行動力, 美・従順の2次元については有意な発達的変動はみられないが, 知的次元は, とくに男子において年齢段階による有意な変化が認められた。 4. 性役割の認知パターンとその発達の仕方には, 男女により異なる特徴が見出された。すなわち, 男子は中学生では女性にも美・従順とともに知性も期待する複合的なものが, 高校以上になると, 男性には行動力と知性, 女性には美・従順という風に男女に対して分化した認知パターンが成立する。他方, 女子は, 男性に対しては行動力, 知性を期待するが, 女性に対する役割特性の認知は消極的で, 美・従順次元の性役割識別性は男子に比べて有意に低い。