本研究は, 田中が先に行なった正常児CA4才から6 才までの180名を対象とした基本的幾何学の概念に対する図形認知の結果と, それと同一実験課題を精薄児MA 4才からMA6才までの93名に与えた結果とを比較検討することによって, 精薄児の図形に対する類同認知の特性を明らかにしようと試みたものである。 ここで明らかにされた精薄児の図形認知の特性としては, 次のようなことがあげられる。 (1) 形態的類似性の図形に対する認知の優位が認められる。 (2) 眼球の走査過程が一致すると考えられる図形に対する認知の優位が認められる。 (3) 単純な転旋による操作的認知は認められるが, 内因的な関係系による操作的認知は非常に劣っている。 これらの諸特性は, 正常児においても認められたものである。 (4) 正常児と異なり, トポロジー的類似図形は, 形態的類似図形よりも優位に選ばれる傾向がある。 (5) 選択行動において精薄児は, 正常児よりも明らかに劣っているといえる。