高等学校の英語の多読教材の授業を直接教授法を用いて行なったところ効果的であることがわかった。教室では英問英答, 要約, storytellingを試みたが, 要約は一般の生徒にとって困難な課題であった。この研究の目的は要約を構成する情報に関する教師の期待を伝えることが, 被験者の伝達能力に及ぼす効果を調べることである。そのため4つの測度が用いられた。6人の教師によるテスト材料の評定に基づく, i) 有効伝達単位点とii 非有効伝達単位点, この両者の相互関係に基づいた血) 要約評定点, およびiv) 語数である。被験者は高等学校 1年生, マッチングによって得られた各群29名からなる 3群で, 次のプログラムに従って訓練を受け, テストされた。 pre-testではすべての被験者に冒険小説の1章をテスト問題として40分間で読んで要約を書かせた。訓練期間中はまずすべての被験者に英問英答により教材を理解させた。その後で統制群 (C群) では2名の生徒に口頭で教材を要約させた。第1実験群 (E I群) では教授者が要約のモデルを聞かせ, 1人の生徒に要約させた。第2 実験群 (E II群) ではE I群のモデルと同じ情報を含む英問を与え答えさせ, 1名の生徒に要約させた。この訓練手続きを4回繰り返した。post-testはpre-testと同じことを同一テスト材料, 同一時間で行なった。 その結果, 全般にE II群がもっともすぐれ, C群は情報の操作でほとんど進歩を示さなかった。E I群は両者の中間にあり, 非有効伝達点単位を増さない点でEH群と共通点があり, 有効伝達単位点のE I群, E II群の差はあまり大きくないが, 有効伝達単位点の増加という点でC群と共通し, E II群に劣った。このことから, 英問英答によるほうが情報を体制化する方法がよりよく学習されたものと思われる。 語数は筆者の予想に反し, 各グループとも増加した。このことは教材の理解が進むとより多く表出したくなる傾向が生ずることを示唆するもので, これは要約に生じがちな困難点の重要な一因であると思われる。C群では増加が大きく, 他の群はそれに比して増加を抑える傾向を示すことは教師の側の適切な働きかけの必要を示している。