触覚は触一運動的知覚活動の発達の過程で, 対象の特性をより正確に認知できるようになるとするPiagetら (1956) の見解を検討するために実験1はおこなわれた。 被験児 (3; 8-5; 8) は視覚遮断条件下で固定された幾何図形を触れ, それと同じ図形を視覚によって4つの図形の中から選択するよう求められた。12試行をおこない, 各試行ごとに, 手の触知探索運動がV. T. R. で記録された。触知探索行動の評定は, 固定された対象の追跡された輪郭の割合にもとついておこなわれた。 正答率7/12以下の被験児はほとんど輪郭を追跡しないのに対して, 正答率8/12以上の被験児は毎試行図形の50%以上の輪郭を追跡した。また, 年齢を追って選択課題の成績と輪郭の追跡行動とを見た結果, 4才半から5才にかけて, 輪郭の追跡があらわれると同時に課題の誤りも減少することがわかった。 このような視覚遮断条件は, 知覚的には一種の制限条件であり, 手による輪郭の追跡はその制限状況を補う「回り道反応」であると考えることができる (鹿取, 1968)。 実験2では, 制限状況を補う回り道反応としての手による輪郭の追跡を誘導することによって, 視覚遮断条件下での再認の誤りを減少させることができるか否かが検討された。 実験1で5以上の誤りをおかした幼児 (3; 8-5; 3) が統制群と実験群に分けられた。各群には実験1と同様の課題があたえられたが, その際, 実験群の被験児には, 毎試行手による輪郭の追跡を誘導した。 輪郭の追跡行動の誘導によって, ほとんどすべての幼児が50%以上の輪郭を追跡した。さらに, 輪郭の追跡を誘導された実験群は, 統制群より有意に誤りが少なかった。