本研究の目的は, 観察学習の習得過程に及ぼすMode1 の行動提示をObserverがどう認知するかという認知的ズレの大きさと, Mode1に与えられる代理的強化の効果を明らかにすることである。 仮説 1. 認知的ズレが大きい群では, いかなる代理的条件群にも観察学習の習得がなされないだろう。 2. 認知的ズレが小さい群では, 観察学習の習得に代理的強化条件によるちがいがあるだろう。 (1) 代理的強化報酬群は, 学習習得プロセスが早く進行するために, 反応遂行潜時が短かく, また反応遂行量が多いであろう。 (2) 代理的強化罰群は, 丸観察学習習得に対して抵抗が生ずるために, 反応遂行潜時が長く, 反応遂行量も少ないであろう。 被験者は幼稚園男児69名で平均年齢は5.7才である。 実験群は, 認知的ズレの大小群にそれぞれ, 代理的報酬群・代理的罰群・無強化群・統制群を作った。 統制群を除く各群の被験者に1人ずつ, 3分間のカラーフィルムを見せる。フィルムの内容は, 6才の男児が母親とおもちゃ (ブロック, ミニカー, 童話) で遊ぶもので, 結末に報酬・罰・無強化の各効果を入れた。統制群はおもちゃだけが写ったフィルムを見せられた。フィルムを見た後, 実験者は10分間部屋をあけOBの行動観察をする, その後,「自分の好きなことをして遊びなさい」と教示を与え, 5分間観察をする。認知的ズレの大きさの操作は. おもちゃ群の中でどれが一番好きかを尋ね, 「ミニカー」と答えた者を認知的ズレ小群とした。 結果は以下のようである。 1. 認知的ズレが大群では, 観察学習の遂行はほとんどみられず, 各代理的条件群間にも有意な差は見られなかった。 2. 認知的ズレ小群では, 報酬群及び無強化群は罰群よりも反応遂行量・反応潜時ともに有意な差が見られた (U=7.0p<. 05, U=10p<.10)。(TABLE 1, 2) 3. 認知的ズレ大群が, ズレ小方向 (ブロック) への反応を示したのがTABLE3である。報酬群は罰群との間に有意な反応遂行量差 (U=12.5p<.05) を示しているのが見られ, 代理的強化の般化が予想される。 4代理的強化条件解除後の自由遊びにおいて, 認知的ズレ小群では報酬群・無強化群は罰群よりも, 有意に習得量が多かった (t=3.87p<.002, t=3.39 p<.05)。(TABLE4)。