実験Iでは記憶能力と概念分類能力との関係が検討された。被験者は4才児, 5才児, 6才児, 各30名であった。各年齢段階の被験者は15名ずつ, 高頻度語群と低頻度語群に分けられた。被験者は絵カードを分類しながら記銘する課題が課せられた。記銘材料は16語からなっており, 4語ずつ4つのカテゴリーに属していた。高頻度語群は高頻度語からなる記銘材料を, 低頻度語群は低頻度語からなる記銘材料を記銘した。その結果, 年齢発達に伴なって, 正分類カテゴリー数が増加し, それを反映して再生語数も増加することが明らかになった。このような結果から, 記憶の発達と概念の発達との問には密接な関係があるという考察がなされた。 実験IIでは概念を利用することは記銘の段階で促進効果をもつのか, 検索の段階で促進効果をもつのかという問題が検討された。 2×2×3の要因計画が用いられ, 分類作業の有無, 検索手がかりの有無, 年齢のいずれも被験者間変数とした。その結果, 検索手がかりを与えることは, いずれの年齢段階においても再生を促進するが, 分類作業を行うことは促進効果を持たないことが明らかになった。このことから, 概念を利用することは記銘の時点よりも検索の時点において顕著な促進効果をもつという解釈がなされた。しかし, 分類作業と検索手がかりとの交互作用がみられたことから, 概念を利用することは記銘の時点においてもなんらかの促進効果をもつということが示唆された。