本研究の主な目的は, Atkinsonの達成動機づけ理論が, いかなる実験課題, 実験条件においてより予測性を持ち得るか, を検討することであった。実験に先立ち小学校6年生の被験者から, 達成動機がより強い群 (Ms>Maf) 及び失敗回避運動がより強い群 (Maf>Ms) の2 種類の動機群が選ばれた。 まず実験課題として, いずれも「努力」が関与するがその程度の異なる単純課題と複雑課題を考えたが, 両課題間の理論仮説の現われ方には差がなかった。この結果は, 両課題問のMs, Mafの喚起度の差は, 「偶然性」の関与する課題と比較した場合程大きくないことによると考察された。 一方実験条件として, いずれも達成志向的であるが, 課題の達成のみを強調した課題志向条件と, 課題達成の持つ「意味」を強調した未来志向条件を設定したが, 結果は課題志向条件において理論仮説との一致がより多く見出された。この結果は, 未来志向条件は他の動機をも喚起する重複的な動機づけ条件と考えられ, Yerkes & Dodson仮説を適用することで説明が可能であると解釈された。