1, 本研究は, 日米の母親を対象に行った面接調査の中から質問紙法, カード分類法, により, 就学前教育に関する諸意見及び母親の子どもに対する発達期待等を測定し, 比較検討した結果の報告である。 2, 調査内容は (1) 就学前教育に関する意見として, ☆何が重要か, ☆発達期待の高さと内容, (2) 子どもの発達・教育に関する母親の役割に関して, ☆母親の教育参与 (責任) の認識, ☆学業成績の規定因 (親の規定性) についての認識, である。 3, 次の諸点が見出された。 a. 就学前教育として, 日本の母親は表現・言語・知的面を, 米国の母親は自立・社会の面を, それぞれ他方の母親より重視している。またこの意見には日米双方で階層差が認められた。しかしその相関パターンは異なり, 就学前教育の課題に関する認識が, 日米間で異なることが示唆された。 b, 子どもへの発達期待の全般的水準については, 日米間に差がみられないが, 領域別にみると, 日米の発達期待の内容的特徴が明らかになった。日本では情緒的成熟と自立・米国では言語による主張と社会的スキルで, それぞれ他方より有意に高く (早期に) 発達を期待している。また日本の母親間では階層差あり, 高学歴の群でそれが高い。 c, 母親の教育責任の認識は, 全般的には差異はないが, 領域により日米差がみられる。日本の母親の中では高階層ほど母親の教育参与を大きく認識しており, さきの発達期待の高さとともに, この階層の母親における子どもへの教育的Pressが推論され, この群の子どもの知的発達への影響が示唆された。 d, 子どもの知的達成に対する母親の規定性は, 米国の母親において著しく大きく考えられている。これに比べて, 日本の母親では, 素質や運などの評価がより大きいことが特徴的であった。またこの意見と, 母親の教育参与の認識との間には, 相関的な対応がみられた。