本研究では, 観察学習の成立における課題の複雑性の程度と代理性強化の有無が弁別移行学習課題を用いて検討された。被験者は小学2年生96名 (男女各48名) であり, モデルは訓練を受けた女子大生であった。 主な結果は次の通りであった。 (1) 課題が容易であればVRの有無にかかわらず学習成立者が多くなり, 課題が複雑になると学習成立者は少なかった。 (2) ST, CTともにVR群, NVR群のIDS者に差はなく, VRの効果性は一応否定されたが, CTのVR群に EDS者が多く出現した。 (3) 課題が複雑になるとMOの適切手がかりを抽出しにくいことが内省報告からもみられた。これらの結果からVRの効果性は一応否定されたが, CTのVR群でEDS者がIDS者とほぼ同じく出現したことに関して, VRの情報機能および新しいテスト事態への動機づけ機能の課題解決に果たす役割が論じられた。 付記 本研究に対して終始暖かいご指導を戴いた広島大学教育学部幼児心理学講座, 祐宗省三助教授に厚くお礼申しあげます。また実験に心よくご協力下さいました広島市立段原小学校の教師・児童の皆様, およびモデルの女子学生諸氏にお礼申しあげます。