本研究の目的は, いくつかのカテゴリーを含むリストの単一試行再生学習において, リハーサルが直後再生と最終一括再生でいかなる効果をおよぼすかを発達的に検討することであった。直後自由再生 (IFR) では再生量と群化量が測定され, 最終一括制限再生 (FCR) ではカテゴリーごとの制限再生が用いられ, 再生量が測定された。被験者は小学3年生 (実験I) と大学生 (実験II) で, Overtリハーサル (O) 群, Covertリハーサル (C) 群およびMinimalリハーサル (M) 群の3条件に割りあてられた。記銘材料は8カテゴリーから選定された事物線画であり, 1リスト20項目に4カテゴリーが含まれた。なお, 実験Iでは2リスト, 実験IIでは4リストが用いられた。 主な結果は以下の通りであつた。 IFR: 再生量に関してはどの年齢でもO群とC群がM群よりも優れ, O群とC群の間に有意な差はなかつた。しかし, 系列位置でO群とC群を比較すると, 新近位置と初頭位置で発達差がみられた。すなわち, 小学3年生は新近位置でO群がC群より優れ, 初頭位置でその逆の結果を示したが, 大学生のO群とC群はどの位置でも非常に類似した曲線を示した。群化量に関しては, 大学生ではO群とC群がM群より優れていたが, 小学3年生では 3群間に差はみられなかった。また大学生は小学3年生より優れた群化量を示した。FCR: 全ての群の系列位置曲線は初頭位置で最も高く, 新近位置で最も低かった。どの年齢でもO群とC群はM群よりも優れ, O群とC群の間に差はみられなかった。IFRとFCRの再生量を系列位置ごとに比較すると, 小学3年生でIFRよりFCR の中央位置の成績が優れたが, 逆に新近位置ではどの年齢でもIFRの成績が優れ, FCRで負の新近性効果がみられた。 これらの結果から以下のことが示唆された。(1) リハーサル活動によってIFRとFCRに初頭性効果がみられた。これはLTSの成分を表している。(2) 大学生はカテゴリー情報を有効に利用する精緻化リハーサルを行うが, 小学3年生は単なる項目の反復にすぎない維持的リハーサルを行う。(3) これまでの無関連語リストで負の新近性効果がみられたのと同様に, カテゴリーを含んだリストの制限再生でもそれが見出された。