本研究は次のような目的でなされた。(1) 中学生は, 努力, 能力, 先生, 運の4要因が各教科領域の学業成績をどの程度, 規定していると認知しているか,(2) 4つの因果帰着要因間の関係はWeinerの提唱するようなLocus of Controlと安定性の2次元構造をなしているか,(3) 因果帰着のあり方は自己評価や現実の学業成績を予測しうるか 対象は中学2年生男子91名, 女子80名であり, 32の教科領域について因果帰着と自己評価を尋ねる質問紙LCA が実施された。 その結果, 次のようなことが明らかにされた。(1) 数学, 英語, 国語はE要因が特に重視されているのに対し, 音楽, 体育, 美術のような芸能科目では, 相対的にA要因が重視されていた。また, 理科や社会ではT要因が比較的重視されていた。(2) 因果帰着要因間の関係については学業成績の場合, Weinerの2次元モデルは十分支持されなかった。E要因とL要因は最も分離しており, 特に安定性の次元については問題がある。(3) 因果帰着のさせ方は自己評価の予測要因になっていなかった。また, 実際の学業成績を予測する場合はE要因のみが有効であった。しかし, 因果帰着のあり方は, 自己評価と学業成績のズレと密接に関連していることが明らかにされた。