本研究の目的は, 第1に, 走姿勢人物画における発達的変容を分析し, 第2に, その描画成績には, 目と手の協応運動技能や視覚的弁別能力よりも, 身体意識の分化がより重要な条件であるという仮説を検討することである。 次の結果が得られた。 1. 固定的な公式的表現がより柔軟な写実的表現に移行した。7才で写実的表現が見られ始め, 12才で十分習得された。 2. 写実的表現の正確さは, 11, 12才でかえって下降した。 3. 身体意識質問紙成績の高い者は, 描画において写実的表現が多かったが, 他の迷路テストや視覚的弁別テストでは, 描画との有意な関係は見られなかった。 次の諸点が議論された: 1. 写実的表現発達の年齢的ずれ (デカラージュ) 2. 人物画と身体意識との関係 3. 空間概念の発達と描画との関係