本研究は, 幼児を対象にして手掛り結合説を検討したものである。実験Iでは, 過剰訓練量と逆転の型を変数として手掛り結合の過剰訓練期間中の変化を検討し, 実験IIでは, 過剰訓練量を変数として, 過剰訓練期間中の負刺激の互換性の変化を検討することによって, 手掛り結合の過剰訓練期間中の変化を明らかにしようとした。その結果, 過剰訓練によって2個の弁別課題間に相互作用をもたらす手掛り結合が形成され, この手掛り結合は過剰訓練量の増大に伴って強固になることが明らかにされた。 実験IIIでは, 単一弁別刺激対を用いた同時弁別学習において2個の刺激個々の学習の早さの差異を過剰訓練の有無との関係において明らかにすることによって手掛り結合説の妥当性を検討した。その結果, 過剰訓練によって手掛り刺激のサイン性に対する反応が学習され, 正刺激および負刺激が手掛り刺激のサイン性において等価になること, さらに手掛り刺激のサイン性に対する反応が逆転によって消去されずに保持されていることが明らかにされた。すなわち, 単一弁別刺激対を用いた同時弁別学習にも手掛り結合説が適用できることが明らかにされた。