本研究では, 社会志向性と課題志向性との高低の組合わせによって構成される4つの類型の児童が, 共同課題解決場面においてどのような行動を示すかが分析された。 その結果, 社会志向性・課題志向性ともに高いHH群は, 作業量も多く, 対人的働きかけにおいても積極的・主張的であった。これに対して課題志向性の優位なLH 群は, 作業量は多いが, 共同者との会話には積極的でなく, 共同者に対して情報を与えることも, 共同者の質問に同意・不同意を返すことも少なかった。また社会志向性の優位なHL群では, 全般に親和的発言が多い傾向にあった。これらの結果は, 両志向性の組合わせから予想される行動と比較的よく対応するものであった。このことから本研究は, 全般的に, 社会志向性・課題志向性という 2つの志向性を仮定し, その組合わせから児童の動機特性をとらえることの有効性を支持するものと言えよう。 このほか, HL群の質問に対して共同者からの応答が少ないこと, LH群が共同者によって積極的な行動を示す場合と示さない場合があること, 両志向性とも低い LL群について, 特に独自な特徴が見出せなかったことなど, 各志向性からは必ずしも予測できない結果も得られており, これらについては, さらに検討が必要であると考えられる。