本研究は, 最近注目されている聴覚障害児 (者) のための字幕番組を作製する際の字幕挿入方法がどのような条件において最適であるかを可読性要因に着目しながら明らかにしようとした。聴覚障害の小学部児童, 中学部生徒及び健聴小4の児童を被験者として, 視聴後の番組理解課題を用いた2つの実験から以下の知見が得られた。 I. 字幕挿入率を30%とした場合の字幕言語水準と呈示時間と学部との関係; (1) 中学部の方が小学部よりも得点が有意に高かった。(2) 小学部においては, 単語水準, 中学部では文水準が有意に高かった。(3) 単語の呈示時間は, 7秒程度, 文の呈示時間は3, 5秒程度が適当であると考えられた。 II. 字幕呈示を5~7秒とした場合の, 字幕言語水準と字幕挿入率と学部の関係; (1) 「場面とすじ」の分析を除いて, 中学部の方が小学部よりも得点が有意に高かった。(2) 「場面とすじ」の分析を除いて, 小学部では挿入率が60%, 中学部では30%の条件が有意に高かった。 以上の結果から, 字幕挿入の最適性条件として, 小学部では単語水準でセリフの60%の字幕を挿入すること, 中学部では文水準でセリフの30%の字幕を挿入することが妥当であることが示唆された。