本研究は幼児を対象にして, 水平配列課題や標本比較課題のように必然的にそこに大きさ弁別学習を基にした遂行の可能性を有する課題に替えて, 大きさ弁別学習に基づく遂行の可能性が存在しない新奇性記憶課題を用いて, “同一性” 及び “差異性” の概念あるいは関係性の形成と, その概念の一般性を検討した。 実験1では120名の幼児を用いて, 遅延時間を変数として新奇性記憶課題において “同一性” 及び “差異性” の概念の習得を検討した。その結果, 幼児は同一学習課題を差異学習課題に比べて速く完成した。しかし遅延時間条件間には学習速度に差がみられなかった。 実験2では, 320名の幼児を用いて, 遅延時間を2秒とし, 新奇性記憶課題において習得された “同一性” 及び “差異性” の概念あるいは関係性の一般性をNonshift-Shiftパラダイムで検討した。同時にこのような概念あるいは関係性の転移に及ぼす過剰訓練の効果をも検討した。その結果, 移行課題に関係なく, Nonshift群はShift群に比べて学習を速く完成した。すなわち転移効果の対称性が見出された。過剰訓練は移行学習を促進し, さらに固執反応を低減した。 以上の本研究の結果は, 幼児が大きさ弁別学習に基づかないで, 真の同一性/差異性の概念あるいは関係性を習得し, それを新しい刺激セットへ転移することを明らかにした。