本研究は, ジェンダーに関する認知的な枠組みとしての性差観とジェンダーに関わる他の意識との関連を検討し, その関連から性差観のジェンダー・スキーマの測度としての構成概念妥当性を検証しようとするものである。747名の女子高校生と726名の男子高校生に, 性差観, 異性意識, 性役割指向性, 性差に対する自覚の経験, 性差の原因帰属を尋ねた。その結果, 性差観の弱いことは次のことと関係していた。(a) これまでの生育過程で内面的な特性について性差を意識した経験がほとんどない,(b) 異性への関心や異性からどのようにみられているかということへの関心が薄い,(c) 女性の職業や社会的地位における男性との差を社会の仕組みに帰属させる,(d) 性役割指向性はアンドロジニーないし異性に向いている。このように性差観の弱さはジェンダーに関する意識や事態の脱性別化と関係しており, 性差観の構成概念妥当性が検証された。