古典的テストモデルを考慮に入れた遺伝因子分析により学力の因子構造を調べるため, 100組の一卵性双生児と25組の二卵性双生児と703人の一般児の標準学力テストのデータを分析した。この際, 豊田・村石 (1998) の方法を用い, 一般児のデータを因子の共分散構造を安定させるために利用した。遺伝的影響・共有環境・非共有環境は, それぞれ国語の学力の分散を0.0%, 64.5%, 2.9%, 社会の学力の分散を 52.3%, 17.0%, 4.7%, 数学の学力の分散を0.0%, 47.7%, 10.4%, 理科の学力の分散を56.1%, 0.0%, 13.3%説明しており, 教科によって学力の構造が大きく異なることが示された。また, 古典的テスト理論によるモデルの比較の結果, 同族モデルが最もよくデータの性質を説明しており, 信頼性係数を計算する際,τ等価測定を仮定するα係数の無批判的使用に疑問を呈した。