本研究は15年間の縦断調査より, 1) 人格の安定性と変化, 2) 生存や死を予測する自我機能と人格特徴について分析することを目的として文章完成テストとBarronの自我強度スケールが用いられた。第1回調査時の対象者は422名であったが, 15年間中3度の調査が行われ, 調査を完遂した対象者は90名となった。結果1) 人格の変化及び安定性と性差特徴が示された。家庭内の自己認知, 対人交流, 現在の自己や人生に対する価値における肯定的なイメージは女性が男性よりも多かった。人格上の変化は肯定的な方向と否定的な方向が共に示された。肯定的な家庭イメージは加齢と共に増加した。対人交流での肯定反応は徐々に低下したが, 友人イメージでは肯定反応は70歳と80歳間で低下したが80-85歳間では元に回復していた。自己概念の内'過去の自己は加齢と共に肯定反応が増加したが, 未来の自己は年齢が上がると共に肯定反応から否定反応に変化した。結果2) 70-80歳間で自我機能を維持していた群は生存率が高く, 一方70-80歳間で自我機能が低下した群では死亡率が高いことが示された。また, 70-80 歳間での自我機能の低下群では, 維持群にくらべて他者からみられる自己認知, 身体的自己, 現在の自己の肯定反応が減少していた。以上の結果から, 70歳から85歳の高齢期にかけて人格は発達する可能性があることと, 自我機能は肯定的な自己概念の維持や生存に影響を及ぼすことが示唆された。